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パッド摩擦性能試験と摩擦係数 その3

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パッド摩擦性能試験と摩擦係数 その3

次は速度別摩擦性能試験です。
この試験は、制動初速度を50,80,100,150,200km/h・・と高速まで範囲を広げているのが「JASOパッド摩擦性能試験」との違いです。平均摩擦係数の速度依存性(初速度による摩擦係数の変化。図3参照)を調べるのが目的です。
平均摩擦係数は、初速度によっても違ってきます。例えば、車重は同じでも初速度を2倍にすると運動エネルギーは4倍にもなり、パッド最高到達温度も100~200℃位高くなりますので、平均摩擦係数も大きく違ってきます。

また、パッド材質によっても温度依存性が違ってきます。パッドA(純正)はスポーツパッドに比べて耐熱性が劣っていますので高速では平均摩擦係数が低くなります。パッドD(他社)は基材として金属繊維(鉄)を使っていますので、低温と高温での平均摩擦係数が大幅に違っています。
パッドB(SS)は金属繊維を使っていませんので、平均摩擦係数は比較的変化ありません。また、パッドC(アドヴィックス SPORTS CS)は耐フェード性能、耐高温摩耗性能を改善していますのでパッドB(SS)より高温域まで使用できるのがおわかりいただけるでしょう。

(注記)上記はあくまでも一般的な傾向ですので、実際は車重、速度、使い方などによって大幅に違ってくることがあります。


次は瞬間摩擦性能試験です。
この試験は高速から制動して数百mm秒ごとに瞬間摩擦係数を計算し、1制動中のブレーキフィーリング(詳細は雑学講座54参照)、コントロール性を試験しています(図4参照)。

一般的に、瞬間摩擦係数が制動初期から停止まで安定している方が、コントロール性がよくブレーキフィーリングがよいとされています(最初はガツンと効く方が良いとか、最後になるほど効く方が良い(いわゆる奥効き)とか人によって好みはあるようですが)。
この瞬間摩擦係数も車重、速度、使い方などによって大きく違ってきます。主な原因は、1制動中のパッド温度です。パッドA(純正)は停止前に落ち込んでいますので効きが甘いと感じます。
パッドD(他社)は金属繊維を使用しているため、瞬間摩擦係数は不安定でコントロール性に難があります。パッドB(SS),C(CS)はほぼ安定しておりコントロールしやすいパッドと御評価いただいています。安定した瞬間摩擦係数を得るには、パッドの選定が重要ですが、更に安定させるにはローター径・厚アップ、冷却能アップ(穴明きホイール、アルミホイール)などのブレーキ容量アップ(雑学講座66,67「タフなブレーキ」参照)も効果があります。


パッドを開発するには、上記の他に鳴き試験、降坂シミュレーション試験、ユーザー指定試験などの台上試験を行わなければなりません。また、開発完了までには実車試験も行う必要があります。
パッド開発は、まさに試験との戦いといっても言い過ぎではありません。



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