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電車のブレーキ その8「滑走防止装置」

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電車のブレーキ その8「滑走防止装置」


日本では電車の滑走防止装置は、東海道新幹線の開業時(1964年)から使われています。 自動車のABSより20年近く先輩です。電車の滑走防止装置は自動車のABS (雑学講座17~21「ABS入門」)と同じようにブレーキ力を緩めたり加えたり して車輪がロックしないように制御しているのは同じですが、違っている点 もいろいろあります(下表)。今回は電車に特有なレール・車輪間の摩擦係数 と滑走防止装置についてお話しましょう。


滑走防止装置とABSとの比較

表を比べてみると両者の違いにビックリです。電車の滑走防止装置の主な目的 は読んで字の如く車輪が滑走(ロック)しないようにすることです。一旦ロック すると車輪踏面(レールとの当たり面)が摩耗(フラット)してしまい、その結果 高速走行ができなくなり、乗り心地が悪化します。またフラットになると車輪を 車両から外してその部分を研削しなくてはなりません。当然ながらロックすると 停止距離も長くなってしまいます。
滑走防止装置はレール・車輪間の摩擦力を最大限利用しようとするものです。 そのためにはこの摩擦力(レール・車輪間の摩擦係数に比例)はできる限り大きく、 しかも安定することが望まれます。
ところが、電車は鉄同士が接触しているため、この摩擦係数は最大でも0.15と、(自動車の) 路面・タイヤ間で得られる最大0.9に比べて非常に小さくなっています。また、摩擦係数は レール・車輪踏面の表面状況によってもかなり違ってきます。例えば、表面が汚れた時、 で濡れた時は場合によっては1/2に低下することもあります。あるいは、速度によっても 変化します。高速時は低速時の1/2にも低下します。


鉄同士(車輪とレール)の
摩擦係数は極めて小さい

そのため、新幹線ではこれらの課題に対応するため過去からいろいろな工夫を凝らしてきました。 小さな摩擦係数に対しては、非常に狭い範囲で作動しながら摩擦力を最大限引き出す クリープ制御の採用などです。
また、表面状況を安定させるために、車輪踏面の汚れを定期的に取り去る踏面清掃装置、 セラミック粒をレールに噴射しレール・車輪踏面を適度に荒らす噴射装置(昔は登坂線路 で砂撒きをしていましたがそのリニューアル版ですね)などを装備しています。
あるいはシステムとして、水の掛かりやすい先頭車のブレーキ力は最初から小さくして ロックしにくいようにしています。
今回は主にレール・車輪間の摩擦係数と滑走防止装置の関係についてお話しました。 表からわかるように電車の滑走防止装置は自動車のABSとは車輪数、最高速度など まだまだ相違点がありますが、それらについては別の機会にお話ししたいと思います。


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